生活習慣病とは

生活習慣病

日頃の生活習慣(過食、運動不足、多量の飲酒、喫煙、ストレス 等)が起因となって発症する病気のことを総称して生活習慣病と言います。日本人の死因の多くを占める、がん、脳血管障害、心疾患のきっかけは、動脈硬化によるものです。そして、その動脈硬化を引き起こす原因の多くは、生活習慣病の罹患によるものです。代表的な疾患として、糖尿病、高血圧、脂質異常症などがあります。

また生活習慣病を発症していなかったとしても、内臓脂肪型肥満(内臓の周囲に脂肪がついているタイプ、リンゴ型肥満)で、血中脂質、血糖、血圧の数値が、やや高いという場合でも動脈硬化は促進し、先に挙げた死因の病気を発症するリスクは高くなります。このような状態をメタボリックシンドローム(通称:メタボ)と言い、メタボを判定するための健康診断として行われるのが特定健康診査(特定健診)です。

当院では、生活習慣病に罹患している患者様、その予備群とされる方をはじめ、メタボリックシンドロームと判定された方やその予備群の方を対象とした治療や予防対策も行っています。いずれの診断を受けたとしても自覚症状が出にくい病気なので、放置が続けば先に挙げた重篤な疾患が併発するようになります。このような状態にならないためにも、健康診断等の結果を見て、医師から数値の異常などの指摘を受けた方は、これといった症状がなくても一度当院をご受診ください。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは

運動不足・不摂生な食事を続けていると内臓脂肪型肥満が積み重なり、糖尿病、高血圧、脂質異常症を併発した状態をメタボリックシンドロームと診断します。皮下脂肪の蓄積による肥満よりメタボリックシンドロームの方が動脈硬化疾患のリスクが高いといわれています。
メタボリックシンドロームの診断基準を以下に示します。

必須項目

ウエストサイズ(腹囲)を計測し、男性85㎝以上、女性90㎝以上の場合、内臓脂肪面積が100平方cm以上に相当すると言われています。内臓脂肪型肥満の可能性が高いとされ、さらに3つの数値を確認していく必要があります。

選択項目

必須項目で内蔵脂肪型肥満の可能性が高い方は、以下の3つの数値も確認し、3項目のうち2項目以上が該当するとなれば、メタボリックシンドロームと判定されます。

血糖
空腹時血糖が110mg/dL以上
血中脂質
トリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dL以上、またはHDL(善玉)コレステロールは40mg/dL未満
血圧
収縮期血圧(最高血圧)が130mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が85mmHg 以上

メタボリックシンドロームと判定された方は運動療法や食事療法を行います。目標としてBMI25以下への減量で内臓脂肪を減らし肥満に合併する疾患を予防・改善を目指します。

肥満

肥満とは

脂肪が過剰に蓄積している状態で、具体的な基準としてはBMIが25以上の場合としています。なおBMIの計算方法と適正体重の算出方法は以下の通りです。

BMI=体重(kg)÷(身長:m)の2乗
適正体重=(身長:m)の2乗×22

一口に肥満と言いましても、大きく2つのタイプに分けられます。ひとつは、食べ過ぎ(カロリーの過剰摂取)や運動不足(エネルギーの消費不足)によって引き起こされる単純性肥満です。もうひとつは、原因となる病気のひとつの症状として起きる症候性肥満です。この場合、クッシング症候群や甲状腺機能低下症等によるホルモンの分泌異常、脳腫瘍などが挙げられます。また薬剤の影響として、抗精神病薬等の使用というケースもあります。

なお脂肪が過剰に蓄積しており、それをきっかけとした疾患の発症によって、減量しなくてはならない状態にあると肥満症と診断されます。

肥満が原因で発症しやすい病気に関しては、糖尿病(2型)、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脂肪肝、月経異常、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などです。

主な症状ですが体重が増えることで、膝や腰に負担が加わるようになって、変形性膝関節症や腰痛が起きやすくなります。さらに睡眠時無呼吸症候群、息切れなどもみられるようになります。

治療について

症候性肥満であれば、原因となる病気の治療を行っていきます。

また単純性肥満の場合は、減量していくことになります。BMIの数値を25以下にするというよりは、肥満が影響して合併症になりやすくなる内臓脂肪を減らしていくことを目的とします。体重を減らすことができれば、合併症のリスク等を下げることになります。

この場合の治療法、いわゆる体重減少に関する取り組みですが、基本は生活習慣の改善(食事療法、運動療法)です。食事面では、高脂肪食(オリーブ油等の油脂類、肉類、バター 等)は避け、野菜や魚などを中心にした食事にします。
また体重減少には運動療法も必要です。なかでも脂肪の燃焼に有効とされているのが有酸素運動です。運動量は激しくすることはなく、無理のない程度、具体的には息がやや上がる程度で十分です。内容としては、1回30分以上の軽度なジョギング、ウォーキング、自転車などです。できるだけ毎日行うようにします。

上記以外にも、早食い防止策として食事の際はよく噛む、一日三食の食生活を規則正しくするなど肥満になりやすい生活習慣を改める行動もしていきます。

またBMI35以上の方については、高度肥満症と診断されます。上記の生活習慣の改善だけでは困難という場合は、併行して薬物療法が行われます。このほか薬物療法以外にも、胃の一部を切除して減量を維持していく、外科的治療もあります。

糖尿病

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高血圧

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脂質異常症

脂質異常症とは

血液中に含まれる脂質を血中脂質と言います。一口に脂質と言いましても種類がいくつかあります。LDLコレステロールは悪玉コレステロールといわれておりコレステロールを血中に運ぶ役割があります。HDLコレステロールは善玉コレステロールといわれており血液中からコレステロールを取り除く役割があります。

脂質異常症の仕組みの図

LDL(悪玉)コレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)が過剰な状態になっている(かつては高脂血症と呼ばれた)、もしくはHDL(善玉)コレステロールが血液中で必要以上に少ないと判定されると脂質異常症と診断されます。

診断をつけるにあたっては採血が行われます。診断基準については以下の通りです。

高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール値が140㎎ ⁄ dl以上
高トリグリセライド(中性脂肪)血症 トリグリセライド値が150㎎ ⁄ dl以上
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール値が40㎎ ⁄ dl未満

いずれのタイプであったとしても、血管内でコレステロールは蓄積しやすくなって、動脈硬化が進むようになります。自覚症状が出にくいので、多くの患者様は健康診断等の結果から発症に気づいても放置の状態が続くことも少なくないです。その結果、病状はさらに進行し、血管内での血流が悪化する、血管が詰まるなどすれば、脳血管障害(脳梗塞 等)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの合併症を発症するようになります。最悪の状態にならないためにも、医師から上記の数値の異常の指摘を受けた方は、一度当院をご受診ください。

原発性脂質異常症と二次性脂質異常症

発症の原因は大きく2つあるとされています。ひとつは、原発性脂質異常症と呼ばれるもので、その人の体質、遺伝子異常によって引き起こされるタイプです。家族性高コレステロール血症などが含まれます。もうひとつのタイプは二次性脂質異常症です。これは何らかの病気を発症している、もしくは薬剤の影響によって引き起こされるものです。原因となる病気には、糖尿病、甲状腺機能低下症、肝臓病等が挙げられるほか、肥満、アルコールの過剰摂取も含まれます。薬剤については、ステロイドの長期投与などがあります。

治療について

まずは生活習慣の見直しから始めます。とくに大事なのは食事療法です。高LDLコレステロール血症の患者様は、コレステロールが多く含まれる食品(卵黄、レバー、魚卵、乳製品 等)や油が多く使われている料理は避けます。また、コレステロールを蓄積させにくくする食物繊維が多いとされる、野菜、きのこ類、海藻類、豆類などは積極的に摂取していきます。
さらに高トリグリセライド血症の患者様は、お菓子や果物など糖分の多い食べ物やお酒を控えるようにしてください。

脂質異常症の仕組みの図

このほか、日頃から体を動かしていくことは、トリグリセライド(中性脂肪)を下げ、HDL(善玉)コレステロールを血液中で増やす効果があるとされています。そのため、日常生活に取り入れることが大切です。内容としては、1日30分以上の有酸素運動(軽度なジョギング、水中ウオーキング 等)で、息がやや弾む程度の強度で十分とされていますが、できるだけ毎日行うことが望ましいです。

上記の改善だけでは、LDLコレステロールの数値が目標とされる数値まで下がらないとなれば薬物療法も行われます。

治療目標

特にLDLコレステロール(悪玉)数値は目標があります。
簡易に分類すれば、以下が目標値となります。

心筋梗塞や狭心症を起こしたことがある人は100mg/dl
(海外の報告ではさらに下げる必要があると報告あり)
糖尿病、脳梗塞罹患歴、慢性腎臓病(CKD)のいずれかがある人は120mg/dl
他に若年、高血圧、低HDL、家族歴があれば120~160mg/dl

高尿酸血症

高尿酸血症とは

血液中に含まれる尿酸の濃度を数値化したものを尿酸値と言います。この尿酸値(血清尿酸値)が7.0mg/dL以上と診断されると高尿酸血症と診断されます。
尿酸というのは、プリン体(生体内や食物中に存在するもので、エネルギーの伝達物質となるもので肝臓にて分解される)と呼ばれる物質が体内で分解された際に発生する残りカスです。

高尿酸血症は痛風を引き起こすことで有名ですが、ただ尿酸値の高い状態を放置し続ければ、動脈硬化を促進させやすくなります。高尿酸血症の状態が脳血管障害、虚血性心疾患を発症させるリスクが高まることも証明されており、痛風の対策のみではなく動脈硬化における予防医学の観点からも高尿酸血症は治療する必要があります。

痛風とは

尿酸は水に溶けにくい性質で、高尿酸血症の状態になると結晶化していきます。この結晶化した尿酸が関節に溜まるなどすると、それを異物であると認識した白血球が攻撃をし始めることがあります。すると患部は腫れ、激痛に襲われることがあります。これを痛風発作と言います。同発作は、発症後24時間をピークに1週間程度で症状は治まるようになります。ただ尿酸値を下げる治療をしなければ、再発するリスクを高まるほか、その間隔も短くなっていきます。

原因は3つのタイプに分かれる

高尿酸血症発症の原因は大きく3つあります。1つ目は、体内で尿酸が過剰に産生してしまう尿酸産生過剰型です。この場合、尿酸の元になるプリン体を多く含まれる食品(レバー、干物 等)の過剰摂取、お酒の飲み過ぎ、白血病などの造血器疾患、炎症性疾患などが原因として挙げられます。2つ目は、尿酸の排泄が低下してしまうことで体内に尿酸が増えてしまうことがあります。原因としては、遺伝的要因をはじめ、腎不全等の腎機能障害、尿崩症、脱水症状などです。3つ目は、上記2つの症状が重なる混合タイプになります。肥満の方によくみられるとされています。

プリン体を多く含む食品例

極めて多い(300㎎~) 鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう、肝酒蒸し 等
多い(200㎎~300㎎) 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物 等
少ない(50~100㎎) ウナギ、豚ロース、牛肩ロース、牛タン、ベーコン、ほうれん草、カリフラワー 等
極めて少ない(~50㎎) 魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼ちくわ、カズノコ、豆腐、牛乳、チーズ、鶏卵、じゃがいも、さつまいも、米飯、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、ひじき、わかめ 等

治療について

日頃の生活習慣の見直しから始めていきます。具体的には、体内の尿酸を排泄しやすくするために水分を十分に摂取し、1日の尿量を2,000mL以上にします。さらに尿酸値を上昇させる飲酒を控える(節酒)、プリン体を多く含む食品は避けることも大切です。また肥満の方は減量をしていきます。そのためには運動が有効ですが、ハードな量は必要としません。内容的には、息がやや弾む程度の有酸素運動(軽度なジョギング、自転車 等)を1日30分以上行うようにします。

また尿酸値の数値が高く、医師が必要と判断した場合は平行して薬物療法も行います。患者様の高尿酸血症のタイプによって、尿酸の排泄を促進させる薬(ベンズブロマロン、プロベネシド 等)、尿酸の生成を抑制させる効果のある薬(アロプリノール、フェブキソスタット)を使用していきます。なお痛風発作が起きている最中は、これらのお薬は使用しません。症状が収まってから服用していきます。

なお痛風発作が起きている最中は、関節の炎症や痛みを抑えるための薬物療法があります。この場合、コルヒチン、NSAIDs、ステロイド薬などを使用していきます。

治療目標

薬物治療開始基準は以下の通りです。

痛風歴があれば7.0mg/dl
高血圧、慢性腎臓病(CKD)、心筋梗塞・狭心症歴、糖尿病があれば8.0mg/dl
何もなければ9.0mg/dl

目標値としては血清尿酸値6.0mg/dlとなります。